2024/02/14

衛星リモートセンシング



革新的な衛星リモートセンシングの農業活用

 前回のコラムに引き続き衛星リモートセンシングについて紹介します。その中でも農業分野での衛星を活用したセンシング技術について詳しくご説明します。
皆さんは、NDVI(正規化植生指標)という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
 太陽からの光が地球に当たると、木や草などの植物(野菜は草に区分)はその光の一部を使って「光合成」をします。光合成は、植物が成長するために必要なものです。植物はこの光合成をするために、太陽からの光の中の「赤い色の光」をたくさん使います。
 しかし、植物は太陽からの光のすべてを使うわけではありません。特に、「近赤外線」という目に見えない光は、植物にとってあまり必要ではないので、多くが植物から跳ね返ってしまいます。
 ここで、NDVIが登場します。NDVIは、植物がどれくらい「赤い色の光」を使っているか、そしてどれくらい「近赤外線」を跳ね返しているかを調べる方法です。この二つの光の使い方を比べることで、植物がどれくらい元気か、つまりどれくらい緑豊かで健康な状態かがわかります。
 もし植物がたくさんの「赤い色の光」を使っていて、あまり「近赤外線」を跳ね返していなければ、その植物はたくさんの光合成をしていて元気であることが分かります。その逆も同じです。
 このように植物が太陽の光をどう使っているかを測る方法で、科学者たちはNDVIを使って、大きな森や農場などの植物がどれくらい健康かを調べることができます。

農業における課題

 農業の主な課題には、作物の健康・生産性のモニタリング、灌漑管理、病害虫対応や収穫時期の最適化・土壌管理などがあります。

  1. 作物の健康と生産性のモニタリング
     作物の健康状態や成長を定期的に監視し、最適な成長条件を維持することは作物の生産性を最大限に高めるために重要です。これまでの、経験が浅い農家では作物のストレス状態の想起識別などを手探りで行ってきました。
  2. 灌漑管理の最適化
     特に乾燥地帯や水不足地域では、限られた水資源を効率的に利用し、過剰または不足することなく作物に水を供給することが重要となります。
  3. 病害虫の早期発見と管理
     病害虫の被害は作物の品質と収穫量を著しく低下させる可能性があり、早期発見と迅速な対応が不可欠です。
  4. 収穫時期の最適化
     適切な収穫時期を決定することは、作物の品質や市場価値を最大化する上で重要です。
  5. 土壌管理と肥料の最適化
     土壌の栄養状態を把握し、肥料の過剰または不足を防ぐことが、作物の健康と生産性にとって重要です。

NDVIの農業における主な使われ方

 NDVIによって植物がどのくらい健康かどうか可視化することはお分かりいただけたかと思います。それでは、得られたデータを基に、どのような活用方法があるか見ていきましょう。NDVIを活用した農業の自動化は効率を向上させ、資源活用を最適化し、作物の健康を維持するのに役立ちます。

  1. 灌漑の自動化
     スマート灌漑システム: NDVIデータは、植物が水分をどの程度必要としているかを示します。このデータを利用して、灌漑システムを自動化することができます。例えば、植物の水分ストレスが高い場所を特定し、そのエリアに適切な量の水を自動的に供給するシステムが設計できます。
  2. 病害虫管理
     自動警報システム: NDVIデータから病害や害虫の被害が検出された場合、自動的に警報を発するシステムを設けることができます。これにより、早期に問題を特定し、適切な対策を講じることが可能になります。
  3. 収穫の最適化
     収穫タイミングの自動判定: NDVIデータは、作物の成熟度を示す指標としても使用できます。収穫の最適なタイミングを自動で判定し、収穫作業を効率化することが可能です。
  4. 肥料の適用
     変動施肥技術: NDVIは植物の栄養状態を反映します。この情報を活用して、必要なエリアにのみ肥料を適用する自動化システムを開発することが可能です。これにより、肥料の使用量を最適化し、コストを削減しながら環境への影響も低減できます。
  5. ドローンやロボットの利用
     自律型農業機械: NDVIデータを活用して、ドローンやロボットを使った自律型農業機械を運用することができます。これらの機械は、特定の植物の状態に基づいて、灌漑、施肥、収穫などの作業を自動で行うことが可能です。

最後に

 本コラムでは、農業における最新のセンシング技術について紹介いたしました。
衛星を活用したデータの可視化から農作業の自動化や最適化は技術的には既に活用できるレベルに到達しています。
 IoTBankでは、NDVIシステムと連携した農業のフリートマネジメントなどに挑戦していこうと思っています。ご興味ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

革新的な衛星リモートセンシングの農業活用