
情報通信技術の発達により、人工衛星からのデータを活用したシステムが様々な産業で導入されるようになっています。物流の要を担う運送業界もその1つです。運送業界では主に「動態管理」と呼ばれるシステムを利用して、コスト削減など多くのメリットを享受しています。今回は運送業界における動態管理の導入理由やシステム選定のポイント、運用のコツなどを見ていきましょう。
動態管理とは
配送用車両にGPSを搭載してリアルタイムで位置情報を管理出来るようにするシステムが動態管理です。車載機を直接設置する他、製品によってはスマホやタブレットといったデバイスによって位置情報を管理する事も可能となっています。また、車両の状態・稼働時間・走行距離など管理出来るデータが多岐に及ぶという点も大きな特徴と言えるでしょう。ドライバーと事務所のコミュニケーションが円滑になるだけでなく、位置情報の記録を蓄積していく事で様々な施策にそのデータを活かせるのです。
動態管理はしばしば「運行管理」や「車両管理」と混同される場合があります。一般的に運行管理は配送車両が通るルートや運行計画を最適化するため、車両管理は配送車の状態を正常に保つ安全対策やリース契約の管理を効率化させるために特化した取り組みです。この両者にもGPSの機能を組み込んだシステムが流通するようになっており、動態管理との違いは希薄になりつつあります。
GPSによる動態管理のメリットとは?
動態管理の導入理由として代表的なものには「車両運用コストの削減」が挙げられるでしょう。動態管理システムを導入すると社内で運用している配送車の状況を一元的に管理出来るようになるため、ムダやロスが発生しているポイントを見つけやすくなるというメリットがあります。例えば稼働時間が短い、あるいは走行距離が長過ぎる車両があれば車両削減や運行ルートの見直しが必要であると分かるでしょう。消費ガソリンの量をチェックしておけば、アイドリングストップの徹底が出来ているか否かを判断する事も出来ます。動態管理は導入するだけでコスト削減が実現するものではなく、そのための的確な判断材料を提供してくれるツールであるという意識を持っておきましょう。
動態管理にはコスト削減の他にも「事故発生リスクの低減」というメリットも期待されています。動態管理の端末では車両の運転に関する幅広いデータが記録されており、ドライバーの運転指導に役立てられるのです。急加速・急ブレーキ・最高速度などが時間と場所を含めて細かくチェック可能となっています。ドライバーへの指導だけで安全性の改善が見込めない場合には、最適なルートへの変更も視野に入れましょう。また、動態管理で集積されたデータを社内の既存システムと連携させれば、ドライバーの日報作成における負担を軽減する事も可能です。
システム選びのポイント
運送業界で注目を集めている動態管理システムですが、様々な製品がリリースされているため自社に適したものを選ぶにはポイントを押さえておきたいところです。まず、動態管理システムは「自社の目的」にマッチしたものを導入するように心がけましょう。例えば配送ルートの効率化を優先させたい場合は、最適なルートを自動的に算出してくれる機能が備わっている製品がおすすめです。ドライバーの安全運転を徹底する目的であれば、ドライブレコーダー機能を搭載したものが良いでしょう。動態管理にはコスト削減以外にも様々な効果が期待出来るので、自社が抱えている課題を一度洗い出してその解決に最適なシステムを選んでみてください。
動態管理システムは何らかの形で車両からデータを収集する必要があるため、導入するデバイスのタイプで製品を選ぶというのも1つのアプローチ方法です。車両に搭載されている車載式故障診断システム(OBD)に取り付けるOBD2型は配線工事を必要としませんが、取り付けられる車両はOBD搭載済みのものに限定されています。比較的設置が簡単なタイプとしてはシガーソケット形も人気です。社内用のスマホやタブレットをドライバーに支給している場合は、アプリ型の製品を採用すると導入がスムーズに進むでしょう。その他にも様々な製品がありますが、各タイプで得意分野も異なるので導入目的とも相談する事が大切です。
導入・運用のコツ
動態管理システムは導入しておけば勝手に効果が出る訳ではありません。前提として、実際に配送車を運転しているドライバーの協力や理解が必要になるという点には十分注意しておきましょう。配送車の数を減らすにしてもルートを変更するにしても、毎日の業務に大きな影響が出るのは現場のドライバーです。一方的に会社の都合を押し付けてしまっては、社内の混乱や反発を招く可能性があります。安全対策や業務効率化など、会社とドライバーで共有出来るメリットを事前にしっかり伝えておくようにしましょう。
また、システムを導入した事である程度満足してしまうというのもありがちなケースなので注意が必要です。動態管理はあくまでデータを収集するためのツールであり、コスト削減やその他のメリットに繋げるためには運営側でのデータ活用が重要なポイントとなります。データを振りかえる周期やドライバーとのミーティングなど、どのようにデータを活用していくかの方針はシステム導入前に明確化しておくのがおすすめです。
動態管理システムを活用して業務改善に取り組もう
動態管理はデータの活用方法次第で様々な効果が期待出来るシステムです。それゆえ、リリースされている製品のタイプも多岐におよびそれぞれで得意分野が異なります。まずは自社が解決したい課題点を明確にした上で、最適なシステムを選ぶ事に努めてみてください。実際にシステムを導入する前には、現場のドライバーとよく話し合って導入目的を共有しておきましょう。